どうなってんの? マントル細胞リンパ腫闘病記

2015年3月。脾臓の腫れから発覚した悪性リンパ腫。脾臓摘出・生検の結果、判明した病型はとりわけ手ごわいといわれ、 標準治療も定まっていないマントル細胞リンパ腫(MCL)だった…。 自覚症状のなさと医師のシビアすぎる診断とのギャップに頭の中はチンプンカンプン。いったい全体わたしの身体どうなってんの? MCLと闘う50代オバさんの記録です。

 

諦めない主治医


◆2015年11月3日(火) 4コース/day22
抗生剤の点滴もデノシンだけ、あと一息だ。病室にやってきたM先生が
「今週末退院です」という。そして、

「退院後、検査と評価の後、もう一度入院して幹細胞採取してみますか?

わたしはびっくりしてパンダ椅子から飛び上がり、
「ほんとうですか!? …やる。やる、やります!」と叫んだ。M先生は
「もちろん、私の一存では決められないし、再チャレンジしても採れない可能性もあるけど」と言う。やるならば今回は G-CSF単独投与で、入院は1週間~10日程度とのこと。他の先生方や移植科との調整をする前に、わたしにやる気があるかどうか確認に来られたようだ。わたしが大乗り気なのを見て、M先生は笑顔で去っていった。先生ほんとに諦めてなかったんだ。後ろ姿を見送りながら、喜びがこみあげてきた。

もちろん、わたしの希望を叶えるためだけでなく、この治療法の課題への挑戦という側面もあり、M先生にはなんらかの勝算があるのだろう。そういえば以前、3コース目で採取して採れなかったとき、M先生は
「G-CSF単独投与後に採取すると採れる可能性もある」と言ってたなぁ。

幹細胞採取にはいろいろなコストがかかる。機器を管理する技士さんなど医療スタッフの負担もある。末梢血のCD34陽性細胞数を測定して採取量を予測するが、この測定にもコストがかかる。1回の採取で済めば経済的だが、回数行うとその分コストがかさんでしまう。普通の病院だと、2回採ってダメならそこで終わりだと何かで見たことがある。この病院は研究所でもあるので、追加採取が可能なのだろう。

もし採取できて自家移植に進めるとなれば、これ以上うれしいことはないし、わたしのようなプア・モビライザーにとっての曙光となるかもしれない。ダメでもデータ的に何がしかの貢献はできるだろうし、わたしにとっては「これ以上できないところまでチャレンジした」というだけで後々後悔せずに済む。うれしいサプライズニュースに、それまでどんよりしていた心の空模様に希望の光が差したのだった。

◆2015年11月4日(水) 4コース/day23
今週末退院、となると何かご馳走が食べたくなる。ネットでカニでも買ってはどうか。そう思って通販サイトを物色していたら、
「何やってんの?」と声がしてM先生が画面をのぞき込んでいた。めざといM先生は患者の悪さを見逃さないのである。カムフラージュ画面も間に合わず…いや、別にカムフラージュする必要はないんだけども。M先生は
「カニを食べる元気が出てよかった」と笑いながら退場。

f:id:ABOBA:20191027110654g:plainしばらくしてT先生がやってきて
「カニ買ったんだって?」と言う。もう情報共有されてる…。T先生は、がんはcancer(蟹、蟹座)ともいわれるが、ヒポクラテスががんを「蟹に似ている」と言ったのが起源らしい、とマメ知識を披露してくれた。
「カニを食べて、やっつけちゃってください」とT先生。がってん承知、カニ退治ならおまかせください!

翌日、M先生に
「それで結局カニは買ったの?」と訊かれたので
「それ、T先生にも言われましたよ」と言うと、
「あいつ、おしゃべりだなー」とM先生。あれ?おしゃべりなのは誰だっけ。

先生方は忙しいにもかかわらず、退院するまで会うたびにカニカニカニカニとカニ話が尽きず。何ガニを買ったのか、どうやって食べるのか、とか。I先生までもが
「カニはいいですよ、血糖値も上げませんしねぇ」などとうれしそうに言ってくる。お医者さんはそんなにカニが好きなのだろうか。

◆2015年11月6日(金) 4コース/day25
いよいよ明日退院。血液検査の結果は問題なくサイトメガロウイルスは陰性に。ただし抗菌薬のデノシンは、バリキサという経口薬に換えて後数日飲むことになった。

幹細胞採取で再入院の予定はあるが、今日で全4コースの寛解導入療法は終了。けじめの日である。M先生が来られたので
「先生、長い間ほんとうにお世話になりました」と頭を下げると、いやいや、と手を左右に振り、
「まだまだこれからお世話しなくちゃいけないから!」とM先生。そして
「退院して気になることがあったら、通院の検査のときでも声をかけてね。いつでも診るからね」と。退院する患者にとって、これ以上安心できる言葉はないだろう。
M先生が主治医でほんとに良かったと改めて思う。

◆2015年11月7日(土) 4コース/day26
無事退院。夫が迎えに来てくれた。家に帰ったらカニ退治が待っている。

通販で買った安いカニはタラバだった。食べやすくはあるが、冷凍もので少々水っぽい。本来は我が家ではカニといえばズワイで、生を買って家で蒸して食べるのが習わしなので、ちょっと物足りないな。

と思っていたら、金沢に赴任中の釣友K田さんからセイコガニ(香箱ガニ)がたくさん届いた。セイコガニはズワイのメスで、卵の内子と外子、ミソがたっぷり。小さいので身を取りだすのは大変だが、その労力に見合うだけの味がある。
さっそく蒸して身をとり、殻で出汁をとってご飯を炊き、作ったのは幻の開高丼である。カニの身や卵、ミソをこれでもかと盛り付けてワシワシとかきこむ。
う、う、旨~い! カニ退治最高。

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海の宝石箱、開高丼



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